メタボリック・シンドローム |
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健康と病気と青汁 |
■最近、メタボリック・シンドロームが、依然として死亡原因の2位、3位と上位を占める、心血管の病気(冠動脈疾患、脳血管障害)の最大の危険因子として、クローズアップされている。 ■メタボリック症候群の診断基準は、 腹囲(ヘソの位置)が男性は85cm以上、女性は90cm以上(内臓肥満)に加えて、 (1)中性脂肪が150mg/dl以上またはHDLコレステロールが140mg/dl以下 (2)最高血圧が130mmHg以上または最低血圧が85mmHg以上 (3)空腹時の血糖値が110mg/dl以上 の3項目のうち2つ以上が当てはまるとき、となっている。 ■血糖や血圧など個々の数字が明らかに病気といえるほど高くなくても、2つ3つと重なると脳卒中や心筋梗塞の発症率が数倍から数十倍に急増する。 この危険な状態がメタボリック症候群だ。 ■メタボリック症候群では、各危険因子の重みづけは行わず、まずそれと診断することで、将来の心血管の病気のリスクを予測する。 メタボリック症候群と診断されると、その後12年間の冠血管死、心臓血管死が3.77倍、3.55倍になると報告されている。 メタボリック症候群の頻度は、米国成人22%であり、人種差があり、アジア人は軽度の肥満でもメタボリック症候群を発症しやすいとされる。 ■メタボリック症候群の中心病態は内臓肥満だ。 肥満に関係する脂肪のうちで、皮下脂肪は血管系の病気に大きな害は少ない。 ところが、おなかの中にたまる内臓脂肪は糖や脂肪の代謝の調節を障害し、糖尿病や高脂血症を引き起こし、メタボリック症候群の発現に深く関わっている。 これは、内臓脂肪が、インスリン感受性や糖代謝、脂質代謝、血圧の調節に関わるさまざまな生理活性物質(主には、アディポネクチン、レプチンなど)の産生・分泌を行っているからである。 カロリーの摂りすぎ、運動不足によって内臓脂肪がたまると、このアディポネクチンの分泌が低下し、インスリン抵抗性を生じ、メタボリック症候群が発現する。 ■アディポネクチンは、動脈が傷ついた時に血管壁へ動員され、抗動脈硬化・抗高血圧ホルモンとして作用する。 また、マクロファージの働きを抑制し、さらに種々の増殖因子による血管平滑筋細胞の増殖を抑制する作用を有する。 アディポネクチンはまた、インスリン感受性を増強し、糖尿病を抑制する抗糖尿病ホルモンでもある。 ■以上をまとめると、 運動不足、過食・飽食、遺伝的因子(体質)により肥満、とくに内臓肥満がおこると、早期より低アディポネクチン血症がおこり、全身のインスリン感受性の低下・インスリン抵抗性により、糖尿病、高脂血症、高血圧へと至り、動脈硬化症発症の危険因子群であるメタボリック症候群となる、 ということだ。 さらに、アディポネクチンはそれ自体がもともと抗動脈硬化作用を持つため、低アディポネクチン血症は直接動脈硬化につながる。 ■心血管の病気の発症には、血管内皮機能の障害が大きく関与する。 血管内皮機能は、内蔵脂肪が蓄積した状態ではすでに障害されている。 内臓脂肪蓄積が血管内皮機能を障害するメカニズムとして、高遊離脂肪酸血症によるインスリン抵抗性の増大と血管機能の阻害(脂肪毒性)、低アディポネクチン血症による血管保護効果の喪失、酸化ストレスの亢進が示唆されている。 これら危険因子を介した経路と直接の経路により、低アディポネクチン血症はメタボリック症候群の中心基盤病態として動脈硬化症へつながる。 ■同時に、内臓脂肪の蓄積、アディポネクチンの分泌減少は、尿酸の代謝にも影響し、高尿酸血症の引き金になる。 つまり、尿酸値もメタボリック症候群の指標になるということ。 腹囲がメタボリック症候群の診断基準より小さくても、内臓脂肪が多いと尿酸値が高くなることがある。 定期的な検査で尿酸値が上がってくれば、メタボリック症候群に先行する注意信号と考えられる。 血中尿酸値が7.0を超えたら高尿酸血症であり、痛風発作や動脈硬化症の重要な危険因子となる。 高尿酸血症は生活習慣が原因なので、まず食生活と運動不足を改善して尿酸を下げる努力が必要である。 ■以上のように、内臓肥満はメタボリック症候群の中心に位置し、心血管の病気の発症に深く関与している。 この意味で、内臓脂肪をターゲットとした治療が、メタボリック症候群を基盤とする心血管の病気の抑制の治療戦略としてとくに重要と考えられる。 血糖、血圧、尿酸など個別の数値だけを薬で下げるのは、枝葉を治す対症療法。 最も重要なのは、根幹の内臓脂肪を減らすことだ。 本人が生活習慣を改善することを意識し、その効果を腹囲で実感することが良い結果につながる。 ■内臓肥満の治療に薬はない。 あったとしたら、体にとっては危険なものばかり。 食事と運動を組み合わせて、生活習慣を改善することが一番。 ■食事はまず安全で品質のよいものにすること。 加工食品、保存食品、出来あいの食品をさけ、できるだけ自然のもので、安全で新鮮なものを食べるようにしたい。 ■食事で最もたくさん食べたいのが緑黄野菜。 農薬や化学肥料を使ってない安全な野菜を、食べられるだけ大量に、1日400〜500グラムくらい、毎食前にたくさん食べ食事にも加える。 そしてこれに、ケールで作った青汁を1日1〜2合以上加える。 野菜がたくさん食べられない人では、青汁は1日最低2合必要。 たくさん食べる人は、それより少なくても済む。 できるだけたくさんの野菜と青汁を食事前に摂れば、それだけでおなかがふくらんで、あとのごちそうもあまり食べ過ぎなくて済むというもの。 ■主食のご飯は、白米より胚芽のまじった玄米、七分づきなど。 白米なら麦など混ぜるようにしたい。 ただし、胚芽には農薬など残留しやすいので、無農薬にすること。 日本の蕎麦やイモ(ジャガイモ、サツマイモなど)は、ビタミン・ミネラルが含まれ、米に替わる主食となりえる。 ■肉や卵など脂肪の多い食品は極力へらす。 また、飼育、加工の段階での危険な処理にも不安がある。 食べるなら安全なものを、少量。 蛋白質の摂取は、大豆が優れている。 そのまま食べると消化がよくないので、豆腐などがよい。 大豆には動物に匹敵する良質の蛋白質がたくさんあり、ビタミン・ミネラルも十分含まれている。 やや不足するアミノ酸の補給には、できるだけ精製してない穀類や、小魚、牛乳などを少し加える。 とくに乳製品は優れているので、毎日少し摂るようにしたい。 ■食後のデザートは、果物だけ。 間食も、果物だけ。 それも1日で1個程度。 甘いお菓子など、極力さける。 ■最も大切なことは、たくさん食べないということ。 食事はいつも腹六、七分程度で終了する。 決して満腹にしてはいけない。 1回の食事も1日の食事もできるだけ少ない量で。 かといって、食事の回数が少なすぎると、逆効果のこともあるという。 少ない量の食事でも、1日1回だけで食べると、太ることがあるそうだ。 できるだけ分けて、回数多く食べた方が、やせるには効果的。 要は、何をいくら食べて何カロリーとか、ややこしい計算などあまりせず、体調もよく腹がへこんでくれば、その量でいいということ。 ■これに運動を加えることで、内臓脂肪は効率よくとれる。 運動は歩くだけでよい。 しんどいことや、難しいことは長続きしないのでしない。 息の上がらない程度、自分に合ったペースで歩く。 1日1万歩とよく言われるが、15〜30分(1〜2km)程度でも良い。 できない人は、5分でも10分でも。 毎日少しずつ歩くこと。 家の中の足ふみだけでも、しないよりはずっと良い。 血液の循環もよくなり、ストレスの解消にもなる。 犬の散歩や、写真の趣味などあると、もっと楽しくなる。 各自工夫して、歩く楽しみを見つけるのも、長続きのこつかもしれない。 歩く時間は食後しばらく15分から30分くらいして、だめなら時間のあるとき。 いくら歩いて何カロリーの消費とか、ややこしいことは考えず、要は歩いて腹がへこんでくればそれで成功、万歳。 ■それでも人間、たまにごちそうを食べたくなり、食べ過ぎることも仕方ない。 1日や2日満腹になっても、一度やせるとそれだけですぐに太ることはない。 気をとり直し、あと節制して、帳尻を合わせれば問題ない。 ■このやり方で、私は、85キロが今60キロ。 栄養失調も、体調不良もない。 参考文献 1)島袋充生:日本医事新報4206:89,2004. 2)Matsuzawa Y,et al:Arterioscler
Thromb Vasc Biol 24:29,2004. 3)Shimabukuro M,et al:J Clin
Endocrinol Metab
88:3236,2003. 4)下村伊一郎,他:日本内科学会雑誌93:23,2004 5)流谷裕幸,他:日本医事新報4185:90,2004 |